"人はパンのみに生きるにあらず" (ケイズ ブログ)

ダミーカート ビルダーのすすめ

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僕がダミーカート ビルダーとなってから四半世紀近くが経っている。
そもそもは米軍の30口径M1919A4の無可動銃を手に入れたのが それへとつながるのである。
あの250連のファブリック・ベルトをいっぱいにして体中に巻いてみたい・・・
アパムのように(って、アパムの方が後だが)

しかし当時から30-06のダミーカートは@¥400はしていた。
250連でざっと¥100,000!
宵越しの銭を持たねぇ江戸っ子にゃーちとキツイ!!
そこで知恵を巡らせた。

薬莢なら一発¥100はしないはずだ、中古ならもっと安いだろう。
弾頭も一発¥50はしないだろ。
それを組み合わせれば30-06一発で¥100そこそこだ。
それなら江戸っ子でも稟議は通る。

翌日、こともあろうに銀座の銃砲店を訪れた。
まだ銃砲所持許可もない頃である。
多少敷居は高かったがフェチなる欲望の方が勝っていたのだ。

それまでの構想では「Lee Loader」なる¥5,000程度のローディング ツールと弾頭を300発くらい購入して事を済ますつもりだった。
これならリローディング ダイスもいらない。

しかし・・・

気づいてみればローディング プレス一式、リローディング ダイス5種、弾頭2,500発その他諸々で購入金額は¥200,000近くかかってしまった。

今ならネットなんかで探せばこの半額くらいで済むのだが・・・
しかし、子供の頃からGun誌のターク・レポートでたまに出てくるようなローディング マシーンを手に入れた喜びは金額の問題ではなかった。

かくしてダミーカート ビルダーへの道が始まったのである!


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という事で今回はダミーカート ビルドをレポートする。
まぁ、どこの家でも空薬莢の5~10本は転がっているとは思うので参考になれば幸いである。

まずは上の写真のツールが最近入手したLee社のLoading Hand Pressだ。
オクで¥8~9,000で手に入る。

一般的な作業台に固定するプレス機も持っているのだが、2~300発の量を造る場合は重宝だが、2~30発のダミーカートを造るにはセッティング等に面倒がある。
勿論、常時固定させておく場所があるのであれば問題ないが、カオスな我家などでは不可能だ。

このツールは固定せず左右の腕だけで作動させる至ってシンプルな構造。
ダイスをセットし、両手でグッと開いてケースを入れてリサイズやシーティングを行う。
個人的にはこれは非常に便利で、手放すことのできないツールである。

そういえば昔、同じような動作でカートに蓄圧するレミントンのエアガンがあった。
今持っているとKC庁にタイホされちゃうってアレだ。

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これがリローディング ダイスである。
赤いのがLee社製、グリーンがRCBS社製でヤフオクなどでも¥7~8,000で簡単に手に入る。
赤が9㎜用の3ダイスセット、緑が8㎜モーゼル用の2ダイスセット。
これ以外にもReddingなどが入手可能だ。
一般用以外にコンペティション用の精度の高いものもあるがダミーカートには全くの猫小判なので必要ない・・・がチト欲しいのが人情だ。

何処の製品も使用勝手は同じだが、個人的にはRCBSの方が使いやすい。
ただ、どれも錆には気を付けないとケース(薬莢)に傷をつけてしまう。 

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これはケースに塗るルブリケーション オイルだ。
左が固形ワックスタイプで右が液状のもの。

とにかくこれを塗らずにダイスに挿入するとオオゴトになる事があるので重要なものだ。

さて、これらの道具を使ってダミーカートを造ってみる

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まず、ケースを洗浄する。
左が洗浄前で右がその後だ。

新品は別として使用済みのケースを使う場合はまず汚れを落とす。
大量にある場合はブラス用のクリーナーで化学的に汚れを落とし、タンブラー等で磨く。

今回は30-06弾を8発だけなのでティシュにサンポールを付けて表面を拭いて綺麗にしただけ。
拭いた後は水でサンポールをしっかりと洗い落とす。そうしないとサンポールに含まれる酸の為に表面が酸化して赤っぽくなってしまう。

もっと艶を出したければコンパウンドで磨けばよいが、今回はパスした。


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パッドにルブリケーション オイルを広げて、そこにケースを転がしてオイルを付ける。
あまり付けすぎるとケースの変形を招くので薄く付けていけばOKだ。
5~6本づつコロコロと転がして付けるが、ネック部分にもしっかり付くようにする

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これが30-06用のリローディング ダイス。
左がケースの寸法矯正用のフルレングス リサイジング ダイで、右が弾頭装着用のシーティング ダイである。
本来ならリサイジング ダイにはデキャッピング ピンという直径1.5㎜のピンが出ていて、使用済みのプライマーを取り外すようになっている。
ただしダミーカートの場合、使用済みとはいえプライマーが有る方が『らしい』ので外さずに残している。
その為にデキャッピング ピンを外してあるのである。


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 これがケースのリムを固定するシェルホルダーでケースに合わせて種類がいろいろある。
これはLee社の#2番で45ACP、30-06、308、8㎜モーゼル、7.7㎜ Jap等が共用できる。 


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シェルホルダーをプレスに装着する。
シャフトのスリットにパチンとはめ込む。


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リサイジング ダイを上部にセット
ダイの下端がシェルホルダーに触れるまでねじ込む。
ただし、弾薬の種類によってはここに隙間を作った方が良い場合がある。


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ケースのリムをシェルホルダーにはめて、ダイに押し込んでいく。
この作業で発砲時のプレッシャーで膨らんだケースを元々の寸法にリサイズする訳だ。


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グゥゥと押し込んで一番上まで押し込んだら、今度は逆に引きだしていく。
この工程でケース全体の寸法矯正は終了。
このリサイズでマウス/ネック/ショルダー/ボディ部分の寸法を元に戻さないと、弾頭をのせてもスカスカで固定されず、銃によっては薬室に装填できなくなるので肝心だ。


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ケース リサイズが終わったら弾頭装着の作業に入る。
実弾製造の場合は、この間にプライマーを装着して装薬を入れておく。
でもダミーカートは火薬を入れることは無いのでそのまま弾頭をのせる。
以前は火薬の代わりに砂や椰子殻活性炭を実弾通りの重量で入れたりしたこともあるが、誤解を招くので今は控えている。


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弾頭の繰出し量を測る為に1943年EAU CLAIRE ORDNANCE製M2 BALLの実弾(不活性処理済)を計測する。
全長が約84㎜とでた。
今回はこれに合わせて弾頭の繰出し量を調整する。
因みに30-06は最大全長は84.84㎜までとなっている、これ以上だとガーランドにはクリップでの装填できないという訳だ。
ただし直接薬室に装填するのであればその限りではない(30カービンなどではハイプレッシャーテスト用の弾薬には通常の最大全長よりはるかに長いものが有るようだ。勿論、単発で装填する)


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左側の弾頭が一般的に販売されている30-06等のダミーカートに使用されるもので、米国シェラ社製 150gr FMJだ。
胴体に入っているギザギザはクリンプ溝(グルーブ)と呼ばれるものでケースのマウス先端を絞って(クリンプして)弾頭の脱落などを防止するものだ・・・が、これがイカン。
これがあるために弾頭の突出量が制限されるのだ。

オリジナルの米軍M2 BALL 152gr FMJにもあるのだが位置が2㎜程下に寄っている。
つまりケースから出ている弾頭部分が2㎜程長いのだ。
シェラの弾頭だと短いフォルムになってしまう訳だ。
実用上は全く問題ない言いがかりだがダミーカートとしてみると痛いのである、その2㎜が・・・。



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左からシェラ製弾頭、オリジナルM2 BALL、今回使用した185gr FMJ。
弾頭部分の突出量やシルエットを見ていただきたい。
明らかにシェラ製弾頭は短く曲線のラインもやや直線的だ。
それに比べると185grの弾頭は長さといいラインといい素晴らしい!

・・・まぁ、単なるフェチな拘りだが・・・

でも、このラインは大戦中の各国ライフル弾にもイイ感じだし、クリンプ溝が無いので弾頭の突出量もオリジナル弾に近づけられるのだ。

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アップでどうだ!
30-06だけでなくロシアの54Rにも似合うシルエットだ。
ちょっとした小技を使えば99式実包にも使えてイイ感じになる。

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という事でご覧の方々もダミーカート ビルダーになってみてはいかがだろうか?
フェチな拘りがあって楽しいものである。

因みにダミーカートを一日1,000発くらい造っていると気分が高揚して楽しくなってくる。
僕はこの症状を『ダミーカート ハイ』といって楽しんでいる。
脱法何とかや脱法モデ〇ガンよりも楽しいぞ・・・ハハハ!



by 1944-6-6 | 2014-08-18 23:02 | ダ ミ ー カ ー ト | Comments(6)
Commented by maimai at 2014-08-19 00:41 x
こんばんは、自分も相当にやっていました。ルブ塗って8mm南部なんてのも作っていました。今はやっていませんが。
あのプライマー抜きの中心部で狭くなった首を正規に戻すのがキモですね。初めは知らずに首が細くなりすぎていました。
Commented by 1944-6-6 at 2014-08-19 01:45
>maimai  様
お久しぶりです!

以前より貴殿のHPにてダミーカートへの熱き思いを拝見していました。
やはり銃と弾は対ですよね。
出来れば年代のあったヴィンテージ物がイイんですが日本では中々・・・
貴殿のHP上のM2 BALLの箱を造りたいのですがプリンターが無いので残念!今はダメです。
Commented by シュタイナー at 2014-08-19 07:30 x
昔からリロードに憧れていました。ダミーカート作製たのしそうですね。今度、是非作業させてください。
それにしても、私には30-06はミリタリーボール以外を見ると、目が悪くなったのか と不安になります。何故なんでしょうか?
Commented by 1944-6-6 at 2014-08-19 12:19
>シュタイナー 様
弾造りはイイです、楽しいです、心の修行です。
1日に2,000発の7.92×57㎜ダミーカートを造ったことがありますが、はっきり言って無心です・・・というより、サトルに遭ったような感じで脳内真っ白になります。
100発以下では修行にはなりませんが、いづれ体験させてあげましょう。
>30-06はミリタリーボール以外を見ると、目が悪くなったのか と不安・・・・・・たんにジジイになっただけです。安心して成仏してください。

Commented by カバ男 at 2014-08-21 22:38 x
東宝映画「狙撃」で岸田森がハンドプレスのリローダを操作するシーンを連想してしまいました。いえ30-06ではないんですけどね。
で、こう言うんです主人公の加山雄三に。
「できたよ」って。
その抑揚がなんともいえずに時代のムードで、とってもいかったです。
今度会ったときに言ってくださいね、「できたよ」って。
岸田森ですよ。
Commented by 1944-6-6 at 2014-08-21 23:42
>カバ男 様
いきなり加山雄三がド人になって太鼓叩くアレですね。
確かに怪しい銃砲店で、確か外人が店頭で拳銃を売りに来ていたり、燃えた2000GTがチャチィ車になっていたりと美味しい映画でしたね。
岸田森がまたイイ感じで・・・時代感がイイっすね。
「できたよ」・・・埋もれた部屋の中からDVDを掘りかえして観てみます。